
「蟲と眼球と白雪姫」
MF文庫。 (→amazon →bk1)
終わったーーー
という印象が何気に強い。
たった5冊のわりに色々と濃かった気がします。
そして意外な気もするものの、これが日日日初のシリーズ完結作品。
以下、激しくネタバレ注意。
結末に関しては……あー、これね、一言で言えば夢オチなんだけどね(爆死)
普通の夢オチとちょっとだけ違うのは、夢を見ている本人が自らの姿を理想化していたところか。
それも些細なことではあるけれど。
というよりも、むしろ夢オチという結末に至ったこと自体が些細なことか。
その夢を経て、確かに白雪は成長したんだろうし、生きていくという選択を選ぶこともできたんだろうけど。
どうしてもそれが主題だったようには思えなくて。
そういえば。
最終巻のタイトルが「白雪姫」でそれが鈴音を示していることはすぐに分かったけど。
そこで「神と私の一致構造」の芥川白雪とを繋げられなかったのはやられた。
そもそも、県立香奈菱高校というのがこの世界の中で出てきてない時点で怪しむべきだったかね。
グリコに関してもこうなると、動きやすいキャラであったというだけで、愚龍と大きな違いはないかな。
まぁ確かにグリコと鈴音が仲良くなれたということは、その役割を鑑みると一つの奇跡ではあるんだろうけど、あまりに自然な流れすぎて今更そんな話をされても……という気がする。
愚龍はもはや徹底的に都合の良いキャラでしかなかった。
涙声(メロディアノイズ)との絡みとかがもっとあれば、もう少し印象は変わったかもしれないけど。
竜ゑと御貴の二人。
出番がなくても仕方ないくらいに思っていたので、これは予想外。
活躍らしい活躍はしてないんですけど、印象に残ったのは鈴音・グリコ・愚龍の3人よりも明らかにこっちの二人。
「わたくしは幸せです! どう!?」
「わたくしはとんでもなく幸せです! どう!?」
「さぁ自慢しました大満足。行動しなくてもすでに幸福ですし、あとはなんですか、楽しみましょう。御貴。味わいましょう、世界を。この世界に生まれてきた幸福を!」
終わり行く世界でここまで幸せを主張できた者を他に見たことがない。
最後の最後までうじうじぐだぐだやってた鈴音やグリコ達とは正反対。
一番、そして唯一すっきりする結末を迎えられたのがこの二人だったように思う。
嘆木刑事に関してはやるべきことはやったはず。
ただ、この復讐は本当に誰も望んでいない、単なるケジメでしかなかったからあまり意味はない。
彼に関しての物語は梅ちゃんが死んだ時点で終わっていたというだけの話。
破局(ポイズン)はあまりにもあっさりと生き返ったけど、能力も失い、結局は嘆木と同じく、大切な人を失ってしまったという終幕。
一人部屋は最後まで自分のやれることをやりきった。
概ね彼の望んだ通りの結末だったんじゃないかね……多分もう少しだけ生きたかったとは思うけれど。
肉山カヂリという奇天烈な名前をつけられながら、ある意味、作中でもっとも常識人だったのが彼だったように思える。
性別不明な神蟲天皇を除くと、7つの欠片の中で男性なのは彼だけなんですよね。
その辺、意味があるのか、それとも単なる偶然なのか、ちょっと気になるところ。
話のついでに神蟲天皇に関しては全く見当違いの予想をしてしまいました……
単に神蟲天皇=蟲ということで、蟲全体を統率しているような者は存在しないのね。
不快逆流、殺原蜜姫の退場は予想通りではあったものの、それ故に、殺菌消毒、殺原美名があまりにも予想外。
まさか彼女から「人間、好き」なんて台詞が出てくるとはね……
単なる妹馬鹿かと思ったけど、なんていうか、非常に人間臭いキャラになったなぁ。
最弱(アルティメットシールド)を打ち破るのは絶対にグリコだと思っていたので、彼女の頑張りというか、執念深さというか、諦めの悪さは良い意味で予想外すぎたね。
なんだかんだで常に事態の中心にいたのがずっと人間を避けてきた彼女だったというのは何とも言えない。
アルティメットシールドは典型的な敵役だった、と。
自分の望むもののために、世界の全てを天秤に乗せてしまうという行為は確かに許されるものじゃないし、共感もできないんだけど。
そういう道を選ぶしかなかった彼女はむしろ可哀想に思えてくるのは自分だけですかね……
ただまぁ、結局夢オチでこの世界の誕生が鈴音と愚龍の出会いの時だとすると、それ以前の記憶は全て捏造されたものってことになって、あれれ?って気になってくるんですけど、その辺は深く考えてはダメですか!?
ともあれ、最終巻、個人的には悪くない終わり方だったと思います。
3巻から加速した流れのまま終われたと思いますし。
トータルで名作だったと言える作品かな。
主人公3人(鈴音・グリコ・愚龍)の物語としては3流だったけど。
それ以外の、特に7つの欠片を中心とした物語としては1流だったと言えます。
あまりに脇役が充実しすぎて、主役の印象が薄くなってしまったのは問題と言えば問題なのかもしれないけれどね。