« アンダカの怪造学Ⅲ デンジャラス・アイ 著:日日日 | メイン | 夏月の海に囁く呪文 著:雨宮諒 »
 蟲と眼球とチョコレートパフェ 著:日日日     【ライトノベル雑感】
2006/07/26 14:56

蟲と眼球とチョコレートパフェ
「蟲と眼球とチョコレートパフェ」
MF文庫。 (→amazon  →bk1

これはやられた……
展開としてはベタベタなんだけど、それでも、或いはだからこそ胸に来る。

というわけで「蟲と眼球」シリーズ3作目。
1巻はかなり微妙、2巻も悪くはないけど……って感じの印象だったので、特別期待もしてなかったのですが、ありがちな展開に完全にやられましたよ。
一応、以下ネタバレ気味で。

新キャラの不快逆流こと殺原蜜姫(さいばらみつき)が典型的な「狙ったキャラクター」であるにも関わらず、彼女への仕打ちの描写が残酷すぎて非常に素敵なことになってます。
神の7つの大きな欠片の一つということで。
敵対者に捕まって、身体をぐちゃぐちゃにされたり、実験と称して怪物に食べられたり(肉体を)と異常なことになってるわけですが。
そういう事態を経て、不快逆流としての力が暴走する寸前の台詞があまりにも、あまりにも痛すぎる。
「……ボクの身体は見ないで、手に触れて、ぎゅっとして。最後に一回だけさ。その感触を覚えている。それだけで、きっと消えてしまうのも怖くなくなると思うの。世界──好き」
「人間──好き」
「だから、やだなぁ。憎みたくない。壊したくないなぁ。なにより……消えちゃうのは──やだなぁ。やだよぅ。消えたくない、死にたくないよ、もっとみんなと一緒にいたいよ」

というのが最期の言葉だったりするわけで……
未読の人には意味が一部意味が伝わりづらいかと思いますがー
思わず、それはないだろうと思ってしまうくらいの痛みでした。
ちなみに表紙画像の女の子が蜜姫ね。
口癖が「ちゅっ★」とか語尾が「~なのっ★」(★マークはデフォルト)というような、あからさまに狙ったキャラ作りされてるだけに、そういう少女への残酷描写はインパクト大なわけですよ……

蜜姫以外のことに関して。
ここに来て、1巻・2巻の伏線の回収と新たな伏線の提示があったわけですけど、それが何と言うか絶妙すぎる。
1巻では良い意味でも悪い意味でも、一つの街での、3人の少年少女の物語であったように見えたけど。
今回の話を経て、世界の在りようとか、神の存在(or不在)といったスケールの大きな物語に移行しつつあるようで。
でも、それが唐突な展開じゃなくて、しっかりと下地を作った上でそういう流れになってるのが凄いなぁ、と。
少なくとも1巻の時点では限りなく凡作に近いと思ってましたけど、3巻まで通してシリーズとしてみると、既に名作と言ってもいいくらい、面白く興味深い作品になりました。
ホント、これは嬉しい大誤算。
日日日氏の続刊してるシリーズ物3作品(蟲と眼球、アンダカの怪造学、狂乱家族日記)の中では一番微妙だと思ってた作品がまさかこれほど面白くなるなんて。

あとがきによると、そう遠くないうちに終わるとあるので、それを信じるならば5巻くらいで完結になるのかな。
その中できっちり結末までいけたら、これは日日日氏の代表作になるかもしれない。
残酷な描写が好きじゃないって人はちょっとキツイかもしれないけど、まぁ、日日日氏の作風ってわりとそっち系ですしね(何)
バッドエンドっぽい結末やら、痛いシーンの描写やら、そういう一般的なラノべではあまりやらないことを真っ向から描いてくれるのが日日日氏の一番の魅力な気がするので、好き嫌いは大きく分かれそうな作家になったなぁという気はします(苦笑)
そういうのは苦手とする(忌避する)人が多い、というよりそれが多数派だということは理解してると思うんですよね。
それでも敢えてストレートに描くことで自分のような人間にはたまらないものとなる。
誰からも80点な作品しか作れない作家よりも、人によっては赤点だけど、人によっては満点にもなる。
そんな作品を生み出せる作家の方が自分は貴重だと思うし、好きになれるのですよね。
別に平均点な作品が悪いとは言いませんが。


以下、突っ込んだ内容を少し。
籍口無法が最弱(アルティメットシールド)だということになると、うーん、どういう話になるんだ?
一つに戻りたい派と、そうじゃない派がいて。
殺菌消毒と不快逆流は前者で、涙声(メロディアノイズ)やアルティメットシールドは後者?
でも、7つの欠片の一つが滅びたりするのはマズいみたいだし……目的が分からん。
一人部屋はラストで出てきたみたいだけど、現状、どういう役割があるのか不明。
まだ出てきてない破局(ポイズン)と神蟲天皇(じんむてんのう)のうち、神蟲天皇は何と言うか傍観者的立場っぽいし、となるとポイズンの動きがポイントになるのかね……
一応、主人公(っぽい)眼球抉子の最終目的は鈴音を元に戻すことなわけだから、そうすると一人部屋がどういう目的で動いてるのかというのも重要か。
アルティメットシールドはグリコを使って何かをしようとしてるみたいだし、あまりにも事態が複雑すぎて考えるのが大変。(楽しくもあるけどね)

グリコと言えば、今回はそこそこ出番があったはずなのに全然印象に残っていない寂しさ。
蜜姫のインパクトが大きすぎたってのはあるけどねー
あと、変態刑事こと嘆木狂清(なげきくるきよ)はメロディアノイズの正体に近づいたりして「お」と思わせてくれたものの、その後はただの変態でしかなく、何と言うか、美味しいキャラですね!
手長鬼の梅ちゃんとのコンビは何気に悪くないよね……変態と監禁少女だけども(爆死)
黒木竜ゑ(くろきたつえ)と貴御門御貴(たかみかどみたか)の二人は完全に蜜姫のインパクトで消え去った感じ。
いや、二人とも悪くないんだけどねぇ……


最後にどうでもいい話。
賢木愚龍(さかきぐりゅう)の父である、賢木願鳳(さかきがんほう)はこれで終わりなのかね。
激しくアレなんだが、ガンホーって名前の悪役は自分にはハマリすぎてて、名前が出てくるたびに苦笑せざるをえなかったよ(爆死)
こっちのガンホーは敗れたみたいだけど、向こうのガンホーはどうなることやら(何)