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 ルナティック・ムーンⅤ 著:藤原祐     【ライトノベル雑感】
2005/12/05 06:36

ルナティック・ムーンⅤ
「ルナティック・ムーンⅤ」
電撃文庫。 (→amazon  →bk1

「ルナティック・ムーン」最終巻。
個人的にはかなり文句のつけようがない出来かと思う。
確かに大筋では予想通りな部分が多いのかもしれないけど。
3巻までの「何だかなー」という流れから一気にここまでもってこれたのはある種の才能じゃないかと。
とりあえず、感想はネタバレ含むっぽいのでこれから読む気がある人はご注意を。
発売からある程度経ってるので、そのまま書きますゆえ。

まず、ルナ&シオンに関してはなるべくしてそうなったという印象。
主人公とヒロインなんだろうけど、やたら印象が薄いというか、この作品の看板の二人という気がしないのは自分だけですかね(爆死)
他のキャラの個性が強すぎる(濃すぎる)せいかもしれませんけど。
ていうか、読み終わってから気付いたけど、これって「エヴァンゲリオン」でしたか(爆死)
第七稀存種を用いた世界再生とか、ルナが精神世界みたいなとこで自問自答みたいなのをしたりだとか。
いやまぁ、だからどうということでもないんですけど、ラノベでこういうのは珍しいかもなぁ、と。
なんにしろ、この二人は二人になるまでの過程こそが楽しめる部分だったんだろうなー
4巻のルナが覚醒(羽化?)したシーンであるとかね。

第一稀存種フィオナ=レスファ
全く行動理念が不明かと思ったら、実際はかなり分かりやすかったというオチ。
それにしても、ルナ=ソーシアの使い方は非常に上手かったというか、絶妙すぎた気がします。
1巻開始時点で既に死んでるキャラをここまで生かし切ってる作品はそうそうないですよ。
同じように1巻で早々に死んで、わりとどうでもいいキャラなのかと思ってたトマージ=イルとかもしっかりと役割を与えられてたし。
キャラの使い捨てがなかったのは評価高いですね。
閑話休題。
フィオナはまぁ嫌いなキャラじゃなかったけど、稀存種の中では印象薄いかなぁ。
4巻で活躍の場(出番)がほとんどなかったのも地味に痛かったかも。

第二稀存種カロマイン=セク
正直、彼はかなり好き(爆死)
歪んだ人間しか身近にいなかったがゆえに同じように歪んだ成長しか遂げられなかった切なさというか。
ロイドを狂おしいまでに求めるその姿にはちょっと心震えましたよ(何)
最期が相打ちというのもね、また悪くない逝き方じゃないかな。

第三稀存種エンダ=カーラ
エンダよりもむしろ、世話役のエロイーズが印象に!
あの最期はこの作品中の様々な死に方の中で一番印象に残ってるんですけど。
それはありなのかと。
「私が消えたら、君の好きなことをすればいい」って、そういう意味に取っちゃう(そういう意味にしか取れない)のかー
人ならざる人形に育てられた人間は、同じく人ならざるモノにしかならないのかね。
エンダの最期の言葉も中途で遮られてて気になるところ。

第五稀存種イユ=イエール
概ね想定の範囲内ながら、予想してなかったのは戦闘中のアレですか。
いやーまさかそういう方向で解決策を持ってくるとは思わなかったので。
”血”の描写があった時は「まさか!?」と思いつつも実際にそうだと分かるとやられたなぁ、と。
4巻の感想で彼女が助かるには相当な犠牲が必要って書きましたけど、こういう手法で救済されるとは思ってもみなかったですよ。
ラストではどうなったか分からないながらも、リカは帰ってくるのを待っているというのも良い終わり方。
下手に安易に帰還のシーンを描かなかったことが好印象。
それでいて、しっかりと期待をもたせているのは考えうる最善ではないかと。

第六稀存種ロイド=オド
カロマインとの戦闘は完全に手玉にとってたのに、相打ちというのは意外とあっけなかったかな……
ミュリエルもあっさりイユが殲滅しちゃったみたいだし。
レイン=リィンに関してはぶっちゃけ一番中途半端なキャラだったような(爆死)
やろうとしてることがあったはずなのに、それを諦めて……
ロイドに再会出来たからそれで良かったね、とは自分にはとても思えませんよ。
まぁ、彼女の役目は4巻でルナ&シオンを一度外に逃がすことで終わっていた、5巻の彼女は残り滓に過ぎなかったのかもしれませんけどね。
エピローグでリカがイユのことに触れてるにも関わらず、レインのレの字も出ないあたり、作者も彼女はそこまでの扱いをする必要はないと思っていたのかもしれない(爆死)

第七稀存種リデル=ユルングルス
まぁ、装置ですから……
徹頭徹尾、物語を動かすための装置でしかない彼女に何かを求めようとしても無駄。

稀存種以外で言えば、意外な活躍だったのがセール=ルウジュかね。
単なる変異種の一人にしか過ぎないはずの彼女がこれだけ優遇されてる理由が分からないけど(苦笑)
エピローグもまぁ良かったんじゃないのかね。
あとは何と言っても忘れちゃいけないのがトマズ=ハニヴァー
「さっきまでの余裕はどこにいったのよw」と思わず突っ込んでしまいたくなるほどのあっさりとした敗北っぷりで。
いやーこれはなかなか笑えるキャラでしたね。
レインを助けた(?)理由も不明だし、一人で色々と空回った挙句、自分のミスが原因で死亡ってもはやギャグ。
結局彼は何をしたわけでもなく、物語の中で意味を持ってなかったというのが切ないね!


そんなこんなで。
自分としては4・5巻はかなり楽しめました。
世間的な評判は微妙らしいけど、自分は名作と言っていいと思う。
何より、キャラが空虚じゃないのがいい。
あからさまに作られた記号的で中身のないキャラが最近増えてますからね。
こういう、しっかりと意思をもったキャラを描けるのは素晴らしい。
設定も悪くなかったし、振り返ってみると2・3巻をもうちょっと何とか出来てれば良かったなーという気はしますけどね。
5冊で完結というのもボリュームとしてはおそらくベスト。
特にこの作品がデビュー作となる新人作家ですから、いきなり長編シリーズモノを書く必要はないし。
最近の電撃文庫の傾向を見てると、シリーズモノをだらだらと続けている(続けさせられている?)新人が多い中で、こうやって一つの作品を完結させたことには最大限の敬意を払いたいですよ。


追記
あとがきが物凄く簡潔なのも何ていうか潔いです。
新人作家が初めて一つの作品を完結させたというのに、お決まりの謝辞を除くとたった6行だけ
時と場合によってはあとがきで色々と語るというのもありと言えばありなんですけど、この作品の場合は3巻のあとがきで示しておくべきスタンスはしっかりと書かれているだけに。
今更余計なことを言う必要はないと判断されたのかもしれません。