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 ちーちゃんは悠久の向こう 著:日日日     【ライトノベル雑感】
2005/06/15 21:10

ちーちゃんは悠久の向こう
「ちーちゃんは悠久の向こう」
新風舎文庫。 (→amazon  →bk1

複数の出版社の新人賞を受賞して4冠だか5冠だかを達成した今年一番注目の新人のデビュー作。
(発売されたのは2月なので、もう4冊くらい刊行されてますが)
まず、解説の久美沙織さんも触れてますけど、ペンネームが凄い。
「日」を3つ並べて、読みは「あきら」とかありえないですよ(苦笑)
単語登録しない限りは「ひひひ」で変換するしかないという罠(爆死)

そして、文章。
こっちも解説で触れられてますけど、文体が妙に古めかしいというか、意図的なのかそれとも意識せずになのか、どちらなのかは分からないけど、老練された文章に見えるのが恐ろしい。
とても新人作家の文章とは思えない。
というか、1986年生まれの高校生が書いた文章とはとてもじゃないけど思えない。
多少癖が強いので気に入らない人もいるかと思うけど、個人的にはかなり好きな方。

あと、西尾維新氏やら乙一氏やらを意識してるという意見もよく見かけますが。
どっちもほとんど未読な自分には比較は出来ないんですけど、強いて言えば、ラノベ的な文章と、一般小説的な文章の狭間にある感じが似てるのかもしれない。
この作品、表紙こそイラストがあってラノベとも取れるようになってますけど、中に挿絵は1枚もないんですよね。
そもそも、その表紙も人物の顔は描いてなくて、あくまで作品のイメージ映像って感じだし。
そういう意味でも、ラノベと一般の狭間作家である西尾維新氏らと似てると思うのかもしれない。

内容に関して。
簡潔に言えば、序盤そこそこ、中盤盛り上がってきて、後半一気に加速して、ラストで( ゚Д゚)ポカーン
個人的に終盤まではほぼ物語を理解していたつもりだったんですけど、最後の最後でやられたというか。
こういう結末は全く想像してなかっただけに、一瞬、「え、これ、どういうこと?」と思ってしまった……
てか、未だにラストの部分がよく理解できてないんですけども……
「さよならを教えて」のラストで感じた虚無感と喪失感と不安感と安堵感をごちゃ混ぜにした感じに微妙に近いかもしれない。
後味が良いか悪いかで言えば、確実に悪い方だけど。
ただ、主人公とヒロインが二人でいる、という点を見ればハッピーエンドと言えなくもないわけで。
世界を捨てて二人っきりになるような結末をハッピーと言えるかどうかは人それぞれだと思うけども。
しかし、このラストはホントに想定外だったなぁ。

中盤までは「ONE」の世界観を思い描きながら読んでたんですけど、ラストの描写を読む限り、どうもその認識は間違ってるような感じだし。
彼が彼女を、彼女が彼を、世界に繋ぎ止める絆というあたりは非常に”永遠の世界”っぽかったんだけどね。
うーむ、このあたり、再読してみるとまた違った感覚で読めそうだ。

あとね、この作品で描かれているのは救いのない世界ではないと思う。
むしろ、彼と彼女にだけ”救い”がある世界だと思う。
もしくは、彼女が望んだ”救い”と言ってもいいかもしれない。
それはつまり、彼と彼女以外の全てには救いがないということなんだけども。
”救い”というと、単純に良い言葉に思えるかもしれないけど、そうでもなくて。
”代償のある救い”は「救われる者」にとっての救いであり、「代償を支払うモノ」にとっての絶望と言ってもいいと思う。
この作品での「代償を支払うモノ」は彼と彼女以外の全て……或いは、残された世界


とりあえず、デビュー前に盛大に騒がれたわりにデビュー後はそんなに話題になってない気がするけど、この作品だけ読む限りは谷川流氏とかよりもよっぽど完成されている作家な気がしますよ。
谷川氏は「ハルヒ」や「学校」1巻の時点では、将来性は感じられたかもしれないけど、明らかにまだデビューしたての新人作家という感じだったけど。
それに対して、この人はもう既に文章とかが完成されちゃってる感じがします。
だから、これからどんどん成長して良くなっていくタイプではないと思う。
他の作品はまだ読んでないから、作風が一致してるかどうかは分からないけど、少なくとも、この作品を読んであんまり気に入らなかった人は今後の日日日氏の作品もあんまり気に入れないんじゃないかと思ったり。

好きなキャラは……女性キャラ全員か(爆死)
ちーちゃん、白先輩、林田と素敵なキャラが揃ってたなぁ。
林田は可能性の一つとしての役割。
最悪の可能性……ね。
終盤の展開からはちーちゃんも同じ可能性に辿り着くのかと思わされたけど(汗)

白先輩はラスト前まではちーちゃんの身代わり的な役割を演じさせているように見せかけつつ、実際は逆にスケープゴート的な役割を与えられていた?
ラストが理解できてないので、何とも言い難い感じですけど。
そう言えば、例の苔地蔵のところで先輩に憑依したことは実はわりと重要だったのではないかと思えてきた。

で、ちーちゃん。
印象としては、林田や白先輩の方が強い気もするけど、物語としては彼女の物語なんだろうなぁ。
ただ、物語の中では特別能動的に動いてるわけでもないんだよね。
苔地蔵のところへ連れて行ったこと以外は、ほとんど自分から行動してないし。
その辺がメインキャラであるにも関わらず、あんまり印象に残らない理由か。
別に個性が薄いというわけでもないんだけど。


ともあれ、個人的には非常に楽しめました。
これは作家買いしても良さそう。