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 約束の柱、落日の女王 著:いわなぎ一葉     【ライトノベル雑感】
2004/12/31 17:51

富士見ファンタジア文庫。

第16回ファンタジア長編小説大賞<準入選>受賞作品。
同時発売に佳作と審査員特別賞もありましたが、結局買ったのはこれだけ。
最終的な購入の決め手となったのは、
1.タイトル
2.キャッチコピー
3.あらすじ

まず、一つ目のタイトル。
以前にも書きましたけど、自分は一つの形容詞と名詞とかで構成される短いタイトルよりも、文章っぽいタイトルや長めのタイトルの方が気に入るのですが。
この作品も最初にタイトルを見た時に目に留まりました。
ストレートなタイトルもそれはそれで良いんですけど、やっぱり意味深なタイトルも良いですよね~

二つ目はキャッチコピー。
「― 二千年の時を越えて出逢った二人の約束 ―」
もうね、ツボ入りまくりですよ(苦笑)
この短いキャッチコピーだけでどれだけ妄想できることやら(爆死)

三つ目、あらすじ。
これは単に正統派なファンタジーということだけなんですけども。
富士見ファンタジア文庫が唯一、電撃に対して劣らない聖域がファンタジーというジャンルだと思うのです。
「スレイヤーズ」「魔術師オーフェン」といった超名作は言うに及ばず、一昨年の<大賞>受賞作の「12月のベロニカ」など、良質のファンタジーは電撃ではなかなかお目にかかれないだけに個人的に非常に貴重。
「スレイヤーズ」「オーフェン」「ラグナロク」など、自分が初期にハマった作品は全てファンタジー系であり、今でも時々ファンタジー系の作品が読みたくてたまらなくなるんですけど、そんな時に富士見ファンタジア文庫の代わりは電撃には務まらないなぁと思う。

ここまで長々と作品とはあんまり関係ないことを書き連ねてきましたが、以下、普通の感想。


面白かった、良かった、素晴らしかった。
そんなありきたりな言葉しか出てこない自分自身が悔しい。
それでも、2004年の最後にこの作品に出会えたことに感謝。

ストーリー的には、わがままな女王様と、とある事情により2000年後の未来から召還された一人の男の恋愛物語。
そこに国同士の対立とか、中世ファンタジー系の要素を織り交ぜた感じ。
そっちの方も比較的しっかりしてるんですけど、やっぱりこの作品は恋愛小説だと思う。
最初はわがままで傲慢だった女王の態度がいつの間にか、ツンデレよろしく、主人公にべったりな状態になってるのは見てて微笑ましい。
主人公も敵兵40人とか相手にして、瀕死の重傷を負いつつも、しっかりと女王を守ったりと、最高にかっこ良いですし。
政治関連の話術とかも巧みで、ここまで欠点のない優等生なキャラだと感情移入しづらいことが多いと思うんですけど、この主人公はあんまりそういうこと感じさせなかったかな。
ただただ、凄いと思わされるばかりで。

そんなこんなで、終盤くらいまで読んできて。
その時点でも十分面白かったんですけど、ラストがね……もうね、駄目でした。
何となく想像出来なくもないし、むしろ、こういう結末に至ることは十分予想できたけども。
それでも、実際にその通りになると、切ないなぁ。
しかも、ただ切ないだけじゃなくて、しっかりと前向きに終わってるのもポイント高し。
個人的に、キャラの性格と結末だけなら、昨年の大賞受賞作の「12月のベロニカ」よりも上だと思う。

ライトノベルで泣いたのは昨年の「シルバー・ウィング」(著:神野淳一)以来かな。
自分は比較的涙腺が弱い方で。
王道的なものでも、いかにも「ここが泣き所ですよ」というあからさまなものでも、かなりの高確率で泣いてしまう人なんですけど、それでもラノベでは泣いたことはそんなにないんですよね。
音もない、動きのある絵もない。
ただ、文章があるだけという小説で泣かせるというのは、映画やらアニメやらゲームやらで泣かせるよりも数段難しいと思うのですよ。
だからこそ、それが出来た(=自分を泣かせられたw)作品に対しては標準以上の評価を与えることにしてます。
前述の「シルバー・ウィング」とかはその典型ですね。
ストーリー的にもっともっと面白い作品はたくさんありますけど。
自分を泣かせたラノベということで、昨年の”2003年ライトノベル個人的ベスト10”で3位に入れてあるのはそのため。
そんなわけで、この作品も2004年の個人的ベスト10で上位に食い込むのは間違いないかと。

タイトルの意味も、全部読み終わってみると、納得というか。
「あぁ、そういうことだったのか……」という感じで。
後半の”落日の女王”というのはヒロインが来年に滅亡する国の女王なのだから、深い意味があるわけでもなく、そのまんまで。
じゃあ、前半の”約束の柱”という言葉にはどんな深い意味が隠されているのかと思ったら、ある意味こっちもそのまんまだったという(笑)
でも、終盤までは全然気づかなかったなぁ。


根本的にファンタジー系が好きじゃない人には向かないと思うけど、「12月のベロニカ」や電撃の「空ノ鐘の響く惑星で」(著:渡瀬草一郎)とかが好きな人にはオススメできるかな。
1巻完結というのも大事なところ。
電撃のように受賞作は大抵シリーズ化というのが悪いと言うつもりもないんですけど。
やっぱり、新人は一つの作品をきっちり書き終えるべきという気もするんですよね。
デビュー作がシリーズ化して、デビューして何年か経つのに、未だに完結してる作品が一つもないっていう作家もいますからねぇ(苦笑)
電撃も「塩の街」(著:有川浩)など、きっちりそこで完結させて、次の作品に取り組んでる人もいますけどね。
何はともあれ、個人的に今年一押しの新人さんです。


以下、ちょこっとネタバレを。

カルロがいなくなった後の、クリムの堂々とした様子に泣けた。
辛いはずなのに、死にたいくらい辛いはずなのに、そういうそぶりを全く見せずにリーファンに指示を与えたりするシーンはもうヤバかったです。
その後の、再会を約束した柱の前で待ち続ける様子とかで、完全に撃沈。
クリムのところに行こうと、自らに刃を向けた時に剣がぼろぼろと崩れていく部分とかも最高。

ホントに、この作品に出会えて良かった。
そう思える1冊になりました。