ファミ通文庫。
「Wind -a breath of heart-」のノベライズ版を読んで気になっていた作家さんの新刊。
富士見ファンタジア文庫から出た「てくてくとぼく」は悪くないんだけど、特別面白いというわけでもない作品だったけれど。
この作品はかなりツボでした。
元々、こういう伝奇的なストーリーは大好きですけど、やっぱりこの人の文章は読んでて安定感があるなぁ。
まず、伝奇的作品ということで人がばしばし死ぬのが一つの特徴。
しかも、中盤あたりから「マジで!?」と思ってしまうくらい、さくさく逝っちゃいます。
最初は名もなき犠牲者だったのが、中盤以降、主人公と関係あるキャラが立て続けに殺されたり。
まぁ、なんだかんだで最終的にはハッピーエンドっぽいんで、ダークな終わり方をするわけじゃないんですけど。
気になった部分と言えば、”雪路の獣”関連の説明というか、解説がちょっと少ないような気がしたこと。
追われている時の描写から、実体のない精神体のような存在でもないようだし。
じゃあ、どういう姿をしてるのかというと、その辺の記述は全くないし。
そもそも、こいつは「ナニ」に追われていたのかが全く説明されてないんですよね。
最初は(元)同類に追われてるのかと思ったけど、それだと何で追われてるのかが全く不明だし。
ついでに、今回の”雪路の獣”は過去のこの街周辺で目撃された(=妻になりすましてた)奴と同一?
何と言うか、今回の事件が自然発生的に突発的に起こってるのが謎。
つまるところ、今までは何処にいたのか。
この街にいたのだとすれば、以前から殺人(人食い)事件が頻発してて然るべきなのに。
それがないということは、何処か別の場所から逃げてきたということで。
つまり、この街で事件が起こったのは偶然ということに?
何だか混乱しそうですけど、その辺の解説がきちんとあれば言うことなしだったかなぁ。
キャラで言えば、文句なく須賀桐子が最高。
ビジュアル的に第一印象は微妙かと思ったけど、こういう性格は大好き。
初っ端の告白のシーンでもう一気にお気に入りキャラですよ。
つーか、個人的にベストオブ告白シーンと言ってもいいくらい。
読んでる最中に「うわーうわー」って叫びだしそうになりましたよ。<意味不明
告白シーンなんて数多あるでしょうけど、ここまでインパクトのある告白はそうそうお目にかかれないと思う。
あと、忘れちゃいけないのが笹木孝治。
彼も桐子と同じくらい好きなキャラだなぁ……
作中における彼の存在意義って、おそらく桐子を物語の中心へと導く役目があるだけですけど。
しゃべり方とか、個人的に凄く好き。
どっちにしろ、シリーズ化とかは無理な作品だからこれっきりなわけですけど。
もうちょっと彼が活躍する場面があれば個人的に大満足だったのに。
こんな僅かな登場時間でこれだけのインパクトを与えてるんだから。
主人公と灯雪に関しては特に思うところもなく……
でもまぁ、主人公の気持ちも分からないでもないけどね。
確かに主人公を立ち直らせてくれた、現実へと引き戻してくれたのは灯雪だし。
ただ、その犠牲があまりにも大きすぎて天秤で量りきれない気もします。
香帆とか、あまりにも扱いが可愛そうでしょ(苦笑)
狙ってやってる面もあるんだろうけどさ。
とりあえず、伝記作品が好きな人にオススメ。
文章は読みやすいですし、キャラもしっかりしてるし、ストーリーも概ね悪くない。
桐子の告白シーンと、笹木孝治の存在だけでも、十分名作と言って差し支えないかと(爆死)
ファミ通文庫は今までこれと言って代表作として挙げられるような作品がなかったですけど。
この作品は現時点でファミ通文庫の代表作の一つと言っていいくらい。