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 灰色のアイリス5 著:岩田洋季     【ライトノベル雑感】
2004/03/25 01:09

電撃文庫。

感無量……は流石に言いすぎかもしれないけど。
少なくとも、電撃の作品の中で3冊以上のシリーズで完結した作品の中では最高クラスの出来と言ってよいかと。
この作品の場合、3巻・4巻に盛り上がりどころを用意してて。
自分の中では特に3巻が最高だったんだけど。
気になってたのは、中盤でここまで盛り上げて終盤をどうするか、ってこと。
好きな人もたくさんいるだろうけど、「イリヤの空」なんかは個人的に分かりやすい失敗例。
2巻・3巻で盛り上げておいて、4巻では魅力的なサブキャラを全く動かさずに主人公とヒロインだけで物語を終わらせてしまう。
別にそれがダメなわけじゃない。
ただ自分はそういうのが好きじゃない。

エロゲでもそう。
共通ルートでは複数のヒロインやサブキャラが出てくるのに、個別ルートに入ると主人公とヒロインだけのお話になっちゃうような作品。
マルチエンドのギャルゲだと、それが普通だったりするんだけどね。
基本的にそういう構成は好きじゃないのです。

話を戻して。
この作品でもラストは主人公・朝霧奏と、ヒロイン・朝霧未来、二人の話になりそうな気がしてただけに。
終盤のこの展開は燃えましたね。
レギュラーキャラ全てに活躍の場があって。
最後のとある敵との戦いも総力戦っぽくて、凄い好き。

終わり方もこれ以上ない終わり方だと思うし。
あとがきで作者も次のように言ってます。
「いまの僕が考えうる最高のエンディングを、この物語には与えました。」
これは正にその通りだと思う。
3巻や4巻の内容が、このハッピーエンドを迎えるために必要だと思って書いてたのだとしたら、この作者さんは相当なエンターティナーだと思う。
ハッピーエンドが好きな人、嫌いな人、どっちもいるけど。
自分は基本的には後者なわけで。
それでも「このハッピーエンドは好き」と思える作品も稀に存在して。
その代表例が「Ever17」だったりするんですけどね。
あの作品はラストのハッピーエンドを迎えるためだけに、それまでの全てを描いてきたことが明確で、意味のある、価値のあるハッピーエンドだと思えた。
で、この作品「灰色のアイリス」にも同じことが言えると思う。


キャラの使い方の話でもう一つ。
結局、主人公側の仲間で死んだのは3巻で亡くなった一人だけなんですよね。
瀕死の怪我をしたキャラこそ、ほぼ全員だったりするんだけど、それだけ死を描くチャンスが何度もありながら、結局一人しか死んでいない。
更に言えば、その死んだキャラは物語上そこまで重要なキャラでもない。
にも関わらず、5巻ではその死の影響を上手く描いているというか。
分かりやすく言うと、登場キャラがみんなその死を引きずってる。
作中で何度かそのキャラの名前が出てくるんですけど、その名前が出るたびに涙腺が刺激されて。
この作者は「人の死」がどれだけの影響力を持っているかってことを正確に認識して、かつ上手く物語内で利用してるなぁ、と。
利用っていうと、そのキャラに悪い気がしますけどね。
ただキャラを死なせるだけで、その死をストーリー上の流れの一つとしてしまってる作品に比べれたら雲泥の差なわけですよ。


最終巻のストーリー自体は比較的分かりやすくて、概ね予想の範囲内だったけど。
その描き方が最高に上手かったです。
本音を言えば、ここで終わらせてしまうには惜しいって気持ちも大きい。
でも、電撃はシリーズもので完結してる作品は少ないだけに、ちょっと貴重かも。
全5巻ってことで、比較的読み始めやすいですしね。
個人的オススメ作品です。
岩田洋季氏のもう一つの作品「護君に女神の祝福を!」の方は個人的にイマイチなんで、作家としてオススメは出来ませんが(爆死)

……あぁ、「護君に女神の祝福を!」で思い出したけど。
「灰色のアイリス」にとって、何が一番不幸だったかって、それは間違いなく3巻でのイラストレーター交代ですね。
1・2巻で自分の頭の中に創り上げられたキャラのイメージが、3巻で木っ端微塵になった時の何とも言えない気分は忘れようがないです。
あっち(「護君に女神の祝福を!」)はまだ、ラブコメでキャラも消極的な奴が多いから、まだマシだけど。
こっちは(「灰色のアイリス」)は……ね。
文章からくるキャラのイメージと、挿絵に凄まじいまでの「ずれ」を感じるんですよね。
ニトロの作品に、萌え絵原画家を起用してるような。
或いは、F&Cの作品に中央東口さん(ニトロの原画家)を起用してるような。
「えっ!? この内容で、この人が原画なの!?」みたいな。
そういうギャップが逆に良い場合もありますけど、この作品ではそのギャップが致命的(一歩手前)な欠陥になってる気がする。

挿絵ってのは、最初は微妙に思えても、シリーズを重ねることで慣れていったり。
またはその作品に見合うものに成長していくこともあるわけですが。
残念ながら、この作品ではどっちも感じることができず。
結局、自分の中での奏や未来のイメージは1巻・2巻の東都せいろさんの挿絵でイメージが固定されたままだったなぁ……
そういう意味では途中から挿絵を担当することになった佐藤利幸さんも可哀想ではある。

まぁ、イラストレーター批判はこの辺にしておきます(苦笑)
書こうと思えば、もっと色々書けますけどね……
単なる個人の好き嫌いの問題だけで、「この絵がいい!」って人もいるかもしれないので。
とりあえず、その挿絵への不満を補って余りあるほど、内容は良いです。
3巻での都庁崩壊、国会議事堂襲撃、上野無差別テロ……のあたりは内容も苛烈ですけど、最終的に描こうとしてるのはハッピーエンドなんで。
特に、ハッピーエンドが好きだって人にこそ読んで欲しいですね。

ライトノベルの感想としては異例の長文になってるなぁ。
これでも書きたいこと厳選したんだけど(苦笑)